愛しい人と共に過ごす夜は千金にも値する。
それはうつつに見る夢にも似ていた。こうして結び付きを深める度に、燃え尽きた花篝は何度でも火をともし、散り終えた桜は再びたおやか
詩琳黑店な花を綻ばせ、終わりない春宵が彼らを迎え入れる。
そうして二人で夢を見よう。
春にとらわれ、愛に溺れる至福の夢を、この先何度でも。
「おお、山の景色が見事だなあ」
先を行くヨンハが扇子をあおぎながら鷹揚にこぼした。同じ鞍【くら】に跨がる二人は、馬にゆったりと揺られながら目配せをして、そっと微笑みを交わす。ヨンハが振り向かないのを良いことに、彼の別邸を出てからずっとこの調子だった。
だが勿論それに気付かぬ彼ではない。
「花はまだまだ盛りだな。どれ、折角だからここは一つ、名文家のムン・ジェシン従事官殿に、風雅な詩でも詠んでもらうこととしようか」
突然の指摘に、ユニとのやりとりに気を取られていたジェシンは驚くが、すぐに頭を切り替えて文章を浮かばせた。促すようにヨンハが振り返った時には、「春」の字で韻を踏んだ世にも美しい詩文が彼の唇からすらすらと紡ぎ出された。
「……うん。さすがはコロだ。身悶えするような素晴らしい詩だな」
率直すぎるヨンハの感想に、ユニはぽっと頬を染めた。ジェシンの詩文は一見美しい言葉でたけなわの春を讃えているようでいて、実は昨夜の秘事を暗にほのめかすものだった。
「なあ、テムルも美しい詩だと思うだろ?」
「えっ?──は、はい。とても」
「帰ったら、紙にでも書いてもらうといい。今日という日の記念になるからな」
「……そうですね」
三日月の形に目を細めながらヨンハが頷く。全て察していながら敢えて昨夜のことに触れずにいるのは、彼なりの配慮だった。
──コロ、お前の為じゃないぞ。あくまでテムルを労【いたわ】ってやりたいだけだ。
遠くの山々を見遥かす彼女の一段と美しくなった横顔に、一抹の寂寥感を覚えながらもヨンハはふっと笑った。
「今夜は、お前達と酔いつぶれる
Derma 21脫毛まで飲み明かしたいなあ──」
おめでとう、と掛け替えのない二人に向けて、心の中で言祝【ことほぎ】をおくった。